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2026年6月17日、公益財団法人 草の根事業育成財団さま(東京都調布市)主催の「震災備え事始めプログラム シリーズ2 支援事業者編」に、アドバイザーとして登壇しました。テーマは『非日常の大災害が起こった時、日頃のサポートをどうやって継続するか』。ケアマネジャー、在宅介護支援員など、日々誰かを支える立場にある方々が集まりました。事前に集めた24の悩みを教材に、要配慮者トリアージまで踏み込んで検討しました。
| 実施日 | 2026年6月17日(水)13:00〜16:00 |
|---|---|
| 主催 | 公益財団法人 草の根事業育成財団 |
| 会場 | 調布市文化会館たづくり 研修室(東京都調布市小島町) |
| 対象 | 福祉・介護の支援事業者(定員48名・参加無料) ケアマネジャー/在宅介護支援員/福祉・介護の支援関係者 |
| テーマ | 非日常の大災害が起こった時、日頃のサポートをどうやって継続するか |
| アドバイザー | 山本 賢一郎(防災コンサルタント/株式会社andBOSAI 代表取締役/一般社団法人 防災社会推進機構 理事長) 小原 真理子 氏(京都看護大学大学院看護学研究科 特任教授/NPO法人 災害看護支援機構 理事長) |
| 形式 | 対面/参加者参加型(事前質問の収集 → 質疑・討議) |
1. どんなご依頼だったか
この企画の背景にあったのは、主催者さまが掲げる「災害関連死ゼロを目指して」という目標です。
大災害の犠牲は、建物の倒壊や津波だけで生まれるわけではありません。避難生活の環境悪化、持病の悪化、必要な支援が届かないことによって、助かったはずの命が失われる——それが災害関連死です。そして最も危険にさらされるのは、日頃から支援を必要としている方々です。
その方々を支えているのが、今回お集まりいただいた福祉・介護の支援事業者のみなさまです。支援者が動けなくなれば、支援を受けている人の命が直接に危うくなります。ここに手を打つことが、災害関連死を減らす最短の道だと考え、企画にご一緒させていただきました。
2. 事前に集めた「24の課題」から始めました
今回の企画で特徴的だったのは、講義から始めなかったことです。主催者さまが事前に「2人のエキスパートに尋ねたいこと大募集」として、参加予定の支援関係者から悩みや不安を集めてくださいました。集まったのは24件。いずれも現場の切実な声でした。
寄せられた声の例
- 在宅介護支援員の方から「毎月の支援計画に、災害時にどうするかという具体的な計画項目がありません。何をどうすればいいのか」
- ケアマネジャーの方から「契約先のあるご家族は普段から関係がぎくしゃくしていて、狭い集合生活を強いられる避難所への避難が心配です。在宅避難を選択する決め手は何ですか」
ほかにも「安否確認ができない」「停電・通信が止まる」「どこまでやるべき?」「市が助けてくれる?」といった声が並びました。24件を並べて見えてきたのは、一件一件は別々の悩みに見えて、実は6つに畳めるということです。
24の悩みは「6つの備え」に整理できる
当日は、この整理を出発点にしました。
- ① 役割と責任の線引き(最重要)── 業務・私的・組織ボランティアのどれで動くのか。安全配慮義務や住居侵入のリスクを避けるため、立場を先に決める
- ② 安否確認・連絡体制(最重要)── 事前計画とタイムライン。司令塔役へ「できる/できない」を報告する。順番は自身 → 家族 → 利用者
- ③ 在宅 or 避難所の判断 ── 災害種別・医療依存度・住居の安全で支援を分岐。避難所に行った場合は現地で名簿確認
- ④ インフラ途絶への備え ── 停電・通信断を前提に。非常用蓄電池に加えて、手書き名簿などアナログの手段を残す
- ⑤ 情報の信頼性 ── 行政・NHK等を信頼し、SNSの口伝は基本不採用。信頼できる情報源を計画に明記する
- ⑥ 医療・多機関連携 ── 医師会・訪問診療・社協・民生委員と事前に取り決め、重複と抜け落ちを防ぐ
特に①と②を最重要としたのには理由があります。この2つが決まっていないと、残りの4つは検討すらできないからです。
3. 何を、どう伝えたか
「どこまでが自分の責任か」を先に決める
支援者の方が最も苦しむのは、「どこまでやるべきか」が決まっていないことです。線引きが曖昧なまま発災を迎えると、無限に責任を感じ、結果として支援者自身が倒れます。安否確認に向かう行為ひとつとっても、業務として動くのか個人として動くのかで、安全配慮義務の所在も、住居に立ち入る際の扱いも変わります。
そして安否報告の順番は、自身 → 家族 → 利用者です。冷たく聞こえるかもしれませんが、支援者が生き延びなければ、支援は継続できません。
調布市で実際に何が起きるかを確認する
一般論ではなく、この地域の条件で考えていただきました。首都直下地震では調布市の想定震度は6強。多摩川・野川の氾濫、駅周辺の内水氾濫、多摩川沿いや野川沿いの低地の液状化、国分寺崖線沿いの土砂災害警戒区域——支援先のお宅がどこにあるかで、備えるべきものが変わります。
あわせて確認したのが避難所です。調布市では震災時と風水害時で避難所が異なり、震災時の一次避難所は32か所、要配慮者向けの二次避難所(福祉避難所)は10か所です。この数字を知っているかどうかで、「避難所に行けば何とかなる」という前提が成り立つかどうかが変わります。調布市の高齢化率は21.7%、2053年には約36%に達する見込みです。
要配慮者トリアージ ── 小原真理子先生から
小原真理子先生(京都看護大学大学院 特任教授)からは、「災害時における要配慮者トリアージの背景と方法」をご講義いただきました。この回の核心部分です。
まず示されたのが、震災関連死がどう起きるかという機序でした。避難生活のストレスと環境悪化——寒冷、水不足、食糧不足、塵埃、集団生活、そしてトイレの不備——が引き金となり、脱水や交感神経の緊張を経て、心筋梗塞・脳梗塞・肺炎へとつながっていく。能登半島地震では災害関連死が501人(2026年6月10日報告)に達しています。東日本大震災の関連死3,591人も、急性期・亜急性期に集中していました。
そのうえで示されたのが、避難所入所時の要配慮者トリアージ判断基準(4区分)です。
- 区分1|治療や隔離が必要(酸素・吸引・透析、感染症の疑い)→ 病院・隔離できる部屋へ
- 区分2|日常生活に全介助が必要(胃ろう、寝たきり)→ 福祉避難所・避難所内の福祉避難室へ
- 区分3|一部介助や見守りが必要(身体障害、精神障害、知的障害、視覚障害、中等症以上の認知症、産前産後・授乳中、3歳以下とその親)→ 対象別の小部屋へ
- 区分4|日常生活が自立(元気な高齢者、外国人、妊婦)→ 大部屋・体育館へ
小原先生が繰り返し強調されたのは、「医療者はすぐには避難所に来られない制度と現状がある。だから住民自身・支援者自身がトリアージを支援する必要がある」という点でした。これは、参加された支援事業者のみなさまにとって、自分たちの役割の意味が変わる指摘だったと思います。
「決められないこと」を持ち帰らない
その場で答えが出ない課題も当然あります。行政との役割分担、医療機関との連携、通信が途絶したときの手段——一人では決められないものです。それらは「誰と、いつまでに決めるか」までを決めて持ち帰っていただきました。
4. 参加された方の反応
当日、特に反応が大きかった論点は次の4つでした。
「自分の安否確認を最初にする、という順番に驚きました。利用者さんが先だと思い込んでいましたが、確かに自分が動けなければ何もできません」
参加者の方より「業務として行くのか、個人として行くのかを決めていませんでした。事業所で決めておかないと、職員が判断できません」
参加者の方より「震災関連死の起き方の図が印象に残りました。トイレが引き金になるという話は、初めて聞きました」
参加者の方より「調布市の福祉避難所が10か所しかないと知って、考えが変わりました。全員が入れる前提ではいけない」
参加者の方より質疑の時間は予定を超え、休憩中も相談が続きました。事前に課題を集めておいたことで、参加者が「自分の話」として最初から関われたことが大きかったと感じています。この形式は、他の地域・他の職種でも応用できます。
この形式が向いている団体・組織
- 介護・福祉事業所の連絡協議会、事業者連絡会
- ケアマネジャー・相談支援専門員の研修を企画されている団体
- 障害者支援施設・障害福祉サービス事業所のネットワーク
- 地域包括支援センター、社会福祉協議会
- 災害関連死の予防を政策課題としている自治体
- 「講義形式では現場が動かない」とお感じの主催者さま
事前に参加者から課題を集め、それを教材にする形式は、準備に少し手間がかかる分、確実に現場が動きます。貴団体の状況に合わせて設計しますので、防災講演の講師派遣・講師依頼についてお気軽にご相談ください。
シリーズ2「支援事業者編 パート2」を9月9日に開催します
6月の勉強会を振り返るグループワーク形式。24の悩みを6つの備えに整理し、「私の震災時避難計画」を作ります。
| 日時 | 2026年9月9日(水)13:00〜16:00 |
|---|---|
| 会場 | 調布市市民プラザ あくろす会議室1 東京都調布市国領町2-5-15 コクティー3階 |
| 参加費 | 無料(定員36名) |
| 申込〆切 | 2026年9月8日(火) |
| アドバイザー | 山本 賢一郎(株式会社andBOSAI 代表取締役/一般社団法人 防災社会推進機構 理事長) |
| 主催 | 公益財団法人 草の根事業育成財団 |
当日ベースにする「6つの備え」
お申し込み方法
氏名・所属先・連絡先(メールアドレスまたは電話番号)を、下記の主催者までご連絡ください。
公益財団法人 草の根事業育成財団
電話:090-9316-8882(長谷)/メール:info@kusanoneikusei.net
【予告】2026年10月31日(土) 調布市文化会館たづくり 映像シアターにて、映像資料を用いたワークショップを企画中です(市民参加大歓迎)。
福祉・介護事業所の防災研修をお考えですか?
事前に現場の課題を集め、それを教材にする参加者参加型の研修を設計します。BCP策定支援・避難計画づくりまで対応可能です。株式会社andBOSAI(アンドボウサイ)が承ります。